
日本のメディアでは、外国人労働者の「日本人気低下」や日本における外国人労働者を取り巻く
諸問題が取り沙汰されているが、表層的な情報や印象が多く、本質的なところが見えないことも多い。
過去に約18,000名を日本に就職させ、日本で活躍するベトナム人育成・採用の第一人者であるレロンソン氏に
その問題の本質と、活躍人材の採用手法について、編集部がお聞きしました。
まず、キーポイントとしては、「人材を採用する受け入れ先の日本の企業様は、ほぼ外国人材を直接、採用活動(リクルーティング)ができない」と言う点があります。
技能実習生の場合は監理団体、特定技能の場合は登録支援機関、あるいは、仲介企業や個人が求職者との間に入ります。外国人採用をする際は、現地の中間的な会社と提携して初めて、人材を集め、推薦をもらう事ができます。その募集や採用までのプロセスはその会社に、ほぼお任せになっているというのが現状ですね。
それによって何が起きているのか?ということです。
日本の受け入れ企業は、紹介された人材などを面接する際に、「なぜ当社を選んだのか?」を質問するでしょう。日本での採用の場合は、当然応募者も、面接に備え、その企業について事前に調べ、ある程度志望動機を持って面接に臨むはずです。当然、一度その会社に入ったら、しばらくはその企業で働きますので、できれば失敗したくないから、応募者も真剣ですよね。
では海外から日本に働きに来る人材はどうでしょう。仲介する企業の中には、面接日だけ伝え、本人には当日に会社名だけ伝えるケースもあり、面接当日に、どんな会社でどんな仕事をするかを知るケースも少なくありません。このような手法を取っているケースの応募者は、「日本に行くのが大きな目的であり、御社で働くことが目的ではない」ということなのです。応募者の方も、日本に行くのが目的なので「給料が良くていい会社」に合格するのが目的となります。
片や、日本企業の方も、日本語がほとんど話せない方を前にすると、単純なことしか面接時に聞かなかったりもします。「あなたの年齢は?あなたが日本に行く目的は?」と。それに対し、応募者はとにかく元気よく「日本語の勉強をしたいです。日本の働き方を学びたいです。お金を稼いで、家族に仕送りをしたいです。」という流れが大抵のパターンとなります。日本人の面接ではしない流れが、なぜか外国人採用となると定番になっている。ここでまずは大きなズレが生じていますね。
採用活動のミスマッチもありますが、そもそもの日本企業が求めている層と、応募者の志向の違いも大きなズレを生んでいますね。
以下の図は、弊社で説明する際に使っている図なのですが、多くの日本企業が期待しているのは、第二層以上の将来を担う管理職や専門家候補だと思います。
できれば日本語学習などは省略したい、手だけ動かせば稼げるから、日本学習は必要ない、と割り切っているケースもあるのです。なので、実際、現場で日本語が話せないとなると、日本人従業員との間で軋轢が出たり、日本式の働くスタンスを求められ、お互いの志向が合致しないままで仕事が進んで行きます。そこで数々の問題に発展することもあるのです。
では、その層を集める仲介会社や、手法を取っているか、ということなんです。圧倒的に数が多いのは、第一層ですね。いわゆる「出稼ぎ」組です。
それを承知して、短期的に活躍する労働者を雇用したいという目的であれば、ミスマッチはお互い起こらないと思うのですが、大抵は第二層以上の期待をしている。出稼ぎ組の方は、とにかく早く収入を得たい、外国人受け入れの失敗パターンの代表的なものがこれですね。
この第一層、第二層と言う分けは、学歴とは比例しませんし、都会だから田舎だからということもありません。志向の違いですので、大卒でも、
目先志向の方もいるので、見極めが必要です。
昨今円安による日本離れ、のような報道もありますが、そこで離れるのは、第一層(出稼ぎ組)ですね。その層は数が多いので、日本で働く外国人労働者をひとまとめに、「日本離れ」のように表現をされてしまうのです。日本に働きにくる外国人の多くはまだ若く、日本で働く目的がはっきりしていない方もいます。ただ、第二層に引き上げられる可能性があるのに、そのチャンスがなく流されている層もいるのです。
まずは、今回採用する人材に対し、第2層以上の期待を持っているのであれば、その層が採用できる事業者を選ぶことは必要ですね。海外に就職を希望するベトナム人材が、出国するまでのプロセスをしっかり確認した方が良いと思います。その上で、先述の通り、日本人と同様に、志望動機をしっかり聞いたり、面接方法を変更することは必要ですね。
外国人活躍人材採用に成功している企業もいくつかあります。例えば、外食チェーンのM社様は、毎年、「店長候補」として外国人を採用しています。今年は20名全国で採用しました。募集の段階ではしっかり自社のことや、仕事、キャリアのことについて伝え、ある程度の人材を面接する中で20名に絞り込んでいきます。本当にこの業界に進みたいのか?、志望理由などもじっくり聞いていますね。そうすることで、入社後のミスマッチも少なくなりますね。
人材を仲介する会社任せにせずに、意志を持った採用活動は必要ですね。そして、その仲介会社が、日本語やマナーだけでなく、キャリア・目的意識など、日本に渡る前に、しっかり教育できる体制ができているのかも、大きな差が出てくるところだと思います。